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マーティー
会社員×ブロガー
《高専卒業》
高専の5年間を寮で生活
👉5年では副寮長

小学生から続けているバレー部に入部
👉5年時は副キャプテンとして高専全国大会3位入賞🥉

勉強は1年生の最初はワースト3
👉5年の最後にはトップ3

学生時代に受けたTOEICは295点……
👉社会人になってから1年半勉強して660点取得

“副”がつく役割が自分らしいところ🤭💨
勉強含め、コツコツやるタイプです✨

充実の学生生活を送らせてもらった高専を盛り上げるため、高専生の情報が集まる場として「寮ラボ」を立ち上げました🏫

就職してからは高専で学んだことを活かして、回路設計の仕事を十数年継続しています💨💨

高専に関係ないことは下記の雑記ブログで発信中‼

開発途上でも現場に入り続けた|高専DCONで「Kanro AI」が5.6億円の評価額を得るまで

松尾豊氏から優勝旗を受け取ったとき、
貝淵 蒼馬さんはその重さを感じたそうです。

「旗ってこんなに重いんだな
         と思いました」

僕がインタビューでこの話を聞いたとき、てっきり「物理的な重さ」のことだと思っていました。

でも、話を聞き終わって振り返ると、別の重さもあったんじゃないかなと感じています。

最優秀賞を実感したタイミングを聞いたら、評価額が出た瞬間ではなく、旗を受け取った場面のことを話してくれました。

企業評価額は5億6000万円-

実感は、一瞬では来なかったといいます。

YouTubeチャンネルからの取材。
打ち上げで語り合った「これから」の話。
翌日に届いた投資家からのDM。

そういうものが、少しずつ実感を運んできたそうです。インタビューで話を聞けば聞くほど、感じたことがあります。

5億6000万円の評価は、
完成度の高さだけで

獲得したものではなかった—

ということです。

高専DCONの結果はこちら


目次

実証実験の4日前、全ての前提が崩れた

実証実験の様子(マーティー撮影)

「実証実験の4日前に、
 管径が150㎜と分かったんです」

僕が実証実験に立ち合わせてもらったのは、
高専DCON本戦の約1週間前—

2026年4月30日。
本戦直前なので、
最終調整の空気を想像していました。

実際に現場に行ってみると、そこにあったロボットは「まだまだ発展途上」の状態でした。

そもそもチームは、3D LiDARの調整やタイヤの設計、デモの構成など、管径200㎜を前提にプロダクト設計していたそうです。

それが実証実験の4日前、
現場への事前確認で覆りました―

「150㎜ですよ」と返事が来た瞬間、
今までの設計が組み替えに。

150㎜は、
チームが対応をうたうギリギリの数字です。

「150㎜と聞いた瞬間は絶望でした
 『これ、本番に間に合うのか』

    と頭が真っ白になりました」

管径の数字がひとつ変わるだけで、
LiDAR、タイヤ、制御、基板、筐体まで—

全部の寸法や設計の前提が連鎖的に噛み合わなくなっていったそうです。

でも、止まっている時間はありません。

小径タイヤを設計し直し、3Dプリンタで出力し、実証実験当日に組み立てて臨んでいました。

同じタイミングで別の課題も発生。

「資料も、プレゼンの構成も、
 2週間前から全部作り直しました」

実証実験後のゴールデンウィークは、

  • プレゼン資料の再構成
  • 技術資料の作成
  • 画像認識AIの改良
  • VRアプリの改良

に追われていました。
しかも、どんなにやることが残っていても、
本番の日程は変わりません。

搬入日当日の朝にロボットを組み上げ、
プレゼン資料もギリギリまで修正していました。

技術審査の前夜も、
深夜3〜4時まで調整が続いていました。

本番直前まで、
「完成した」という空気ではなかったそうです。

「本番直前はもうやるだけ、
     という感じでしたね」

この言葉を聞いてようやく、
状況の凄さが飲み込めた気がしました。


超短期で”会社”みたいにプロダクトを作り切った

インタビュー後の写真(マーティー撮影)

ロボット2号機の実質の開発期間は、
わずか1.5週間でした。

話を聞いていると、学生チームというより小さな開発会社の短期プロジェクトのようでした。

チームを結成するとき、チームリーダーの目次さんが意識したのは「短期間で動くものを作れる人」だったそうです。

ロボコン経験者を実力重視で選ぶ。
学年は問わない。

他案件との兼務も乗り越えて、
後輩4人が集まりました。

既にロボコン活動で役割分担が明確なメンバーです。設計から制作、組み立てに至るまで、各プロセスのつなぎ目を理解しているからこそ、短期開発が可能でした。

「誰が抜けても
  成立しなかったと思います」

ビジネス設計・AI実装・制御・回路・筐体CAD。

この5つの専門領域が揃って、
初めて成立したプロジェクトでした。

でも話を聞いていると、単純な役割分担だけではなかったとも感じました。

管径が変更になったとき、5人とも自分の担当領域だけを守る動きにはならなかった。

システム変更でマイコンが変わっても
すぐにプログラムを移植する。

基板変更で筐体が合わなければ
すぐに3Dデータを作り直す。

「完璧じゃなくても、まず動かす」

その判断を、
5人全員がそれぞれの持ち場で続けていました。

だから4日前に前提が崩れても、
開発全体が止まらなかったんだと思います。


なぜ「下水道の点検」だったのか

実証実験の様子(マーティー撮影)

「DCONの過去事例を分析して、
  業性のあるテーマを探しました」

下水道の点検は、
決して華やかなテーマではありません。

でも、
大手の競合が少ない細径管内検査。
チームが得意な4輪ロボットが活かせる分野。
既存機は古く、改善余地が大きい。

理屈はそろっていました。

実証実験の前から、現場へのヒアリングを重ねていたそうです。現場に行って初めて見えたものがあります。

市役所からデータ提供はなく、担当者は大量の紙資料を手作業で参照

豊田市の点検業者の平均年齢は約65歳

人手不足で、5年に1度義務付けられている法定点検も回しきれなくなりつつある

誰でもできる仕組みにしてほしい
という声が、現場から出ていました。

点検のノウハウが、人に依存している。その蓄積をAIで引き継いで、属人化を解消したい。

「何を作るか」より先に、
何に困っているのか」が見えていました。

僕が実証実験に立ち会ったのは、
2026年4月30日の雨の日。

通信の安定性。
バッテリー持続時間。
AI判定の精度。
地図ベースの記録管理—

あの雨の日に現場で出ていた問いが、そのまま本番の投資家との対話になっていました。


投資家との質疑は「詰められる場」ではなかった

©全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト(DCON)

DCONの質疑は、
優しい確認作業ではありません。

現役の投資家が、
事業として成立するか、
投資する価値があるかを本気で見に来る。

だからこそ普通なら、
「詰められる場」になりやすいと思います。

「伝えたいことを
  うまく聞いてくれた感じでした」

リーダーの目次さんから出たこの言葉が、インタビューの後もずっと残っていました。

実証実験のとき、「ロボコン出身者が多いので、プレゼンに苦手意識がある」という話を聞いていました。プレゼンに加えて、投資家の鋭い問いに対してどこまで返せるか、不安があったはずです。

なのに、ステージでは「聞いてほしい質問が来た」という感覚があったといいます。

劣化診断、位置計算、画像キャプチャ、文章化。従来は分断されていた工程を、AIで一気通貫にした。

「普通、ちょっと違う質問が来たら誘導して、言いたいことを話すことが多いんです」

「でも今回は、
  それが必要なかったです」

インタビューのときに、
目次さんから聞いた言葉です。

インタビューの後、 貝淵さんには
印象に残っている質問を尋ねました。

「海外の似た技術と比べた優位性は?」

「なぜ他社は、AI判定から報告書作成まで

   一貫してやれていないのか?」

という問い。

「一番来てほしかった質問でした」

と話してくれました。

投資家の問いと、
彼らが現場で積み上げてきた話が、
最初から噛み合っていた—

ということだと思います。

「詰められる場」ではなく、
現場で見てきたことを
事業として話せる時間になっていました。

下水道という専門性が高い領域だったことも影響していたのかもしれません。

投資家からの質問は、
「市場規模は」
「何に困っているのか」
「なぜ今なのか」
といった本質的な問いに集中していました。

その問いが、
現場での会話と重なっていた。

紙資料の非効率。
高齢化の深刻さ。
AIによる非属人化の意義。

何度も繰り返してきた話を、
そのまま返せる状態でした。

現場で積み上げてきた言葉があったから、
投資家の問いが「詰め」ではなく、
「説明の入口」になっていた
んだと思います。

結果として、
投資家全員が投資意向を示しました。

「これで終わらせてはもったいない」
「一刻も早く起業に踏み切ってほしい」

そこまで言葉に出ていた。

その言葉は、「学生の挑戦を褒める」という空気ではありませんでした。


DCONの最優秀賞はゴールではない

優秀賞受賞後の写真(学生提供)

「現行のハードは、
  まだプロトタイプの段階です」

「現場に求められるかたちで

        更に改良します」

大会直後の打ち上げでも、話していたのは「更なるブラッシュアップ」のこと。

今後は、それぞれの活動がひと段落した段階で、事業方針を決めていく予定だそうです。

並行して、
現行ハードのレベルアップも続けていく。

「現場ヒアリングも続けます」

大会が終わっても、
5人はまだ現場に戻ろうとしていました。

2026年4月30日。
雨の中で見た、あの実証実験を思い出します。

現場の担当者からの問いに、一つずつ答えながら課題を洗い出していく時間でした。

完璧にしてから持っていく―
ではない。

プロトタイプを持っていって、
問いを出してもらって、潰していく。

その繰り返しだったように思います。

でも、今になって思うのは、
「ただ勇気を出せばいい」
という話ではないということです。

完璧なロボットだったから、
5億6000万円だったのではありません。

発展途上でも、
現場に入り続けていた

その積み重ねが、
投資家との言葉を噛み合わせていました。

あの日の優勝旗の重さは、現場で向き合ってきた時間の重さだったんだと思います。

高専DCON最終審査結果通知書(学生提供)

チームプロフィール

Kanro AI(豊田工業高等専門学校)

スクロールできます
氏名学年・学科役割
目次 遥真
(めつぎ はるま)
5年・電気電子システム工学科プレゼン、ビジネス設計、マネジメント
貝淵 蒼馬
(かいぶち そうま)
4年・電気電子システム工学科AI・ソフトウェア統括
德滿 有哉
(とくみつ ゆうや)
4年・電気電子システム工学科モーター制御、AIモデル開発
久保 龍ノ介
(くぼ りゅうのすけ)
4年・電気電子システム工学科回路(PCB)開発
森下 瑛斗
(もりした あきと)
4年・環境都市工学科ロボット筐体CAD設計

指導教員
大畑 卓也 准教授(環境都市工学科)

メンター
渋谷修太氏(Fuller株式会社 取締役会長)


DCON2026 結果

最優秀賞・企業評価額第1位:
5億6000万円(投資家全員投資意向)

主な審査コメント:

  • 「メーター単位の課金」という
    ビジネスモデルのポテンシャルを高く評価
  • ハードウェアへの初期投資さえ済めば
    自然と黒字化に向かう設計
  • 「これで終わらせてはもったいない」
    「一刻も早く起業に踏み切ってほしい」
  • 150mm管に対応することで
    市場の87.1%を占める点など、
    市場を正しく理解していることを評価

高専DCON本戦の約1週間前。

雨の中で行われた実証実験では、
本番前のリアルな課題が次々に出ていました。

今回の記事の「前日譚」に近い内容です。

実証実験当日の記事はこちら

高専DCONプレゼンの様子はこちら

豊田高専ホームページの記事はこちら

高専では、DCON以外にもロボコン、プロコン、WiCONなど、学生が挑戦できるコンテストが数多くあります。それぞれの特徴については、別記事で整理予定です。

【参考文献】
150㎜管への対応が市場の87.1%を占める根拠データ(国土交通省資料より)

下水道法により、5年に1度以上の点検が義務付けられている(国土交通省ホームページより)

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