進学するのは全中学生の1%以下。圧倒的マイノリティーである高専は、受験生からどのように選ばれているのか―
その答えを聴きくため、2026/3/1に名古屋で開催された高専人サミットに参加してきました。高専教育の最前線に立つ校長先生のお話を聴き、何となく感じていた「高専が選ばれる理由」を言語化できました。
この記事では、現地で得た情報を元に高専がなぜ選ばれるのかを解説します。受験生は後悔しない進路選びの判断材料に、高専関係者はファンづくりのきっかけにして頂けると幸いです。
分科会の議論が、寮ラボの発信を改めて考えるきっかけになりました。
高専人サミット2026 in NAGOYA

高専人サミットは、一般財団法人高専人会が主催する年に一度の「高専の大同窓会」です。第1回の東京、第2回の大阪に続き名古屋で開催され、600人以上の高専人が集まりました!
《高専人サミット2026 in NAGOYAの概要》
日時
2026年3月1日(日)13:00開会
※前日2月28日(土)に前夜祭
ハッカソンも同時開催
会場
STATION Ai
➡今話題の最先端イノベーション施設。
参加資格
高専生、高専卒業生、高専教員及び関係者
(2026年度入学予定者、高専保護者含む)
高専人サミット2026 in NAGOYAの様子は、noteでまとめています。気になる方はチェックしてみてください。

分科会4のレポートはこちら👇

高専はどう選ばれているのか:分科会2

高専人サミットの分科会2では、みんなの高専チャンネルの「あっきー」こと渡邊友章さんがモデレーターとして登壇!現役の校長先生3名と一緒に、高専の広報について深掘りしました。
少子化が進む中、高専にとって「学校広報」と「ファンづくり」がこれまで以上に重要になります。各学校の広報事例から高専を選ぶ理由/ためらう理由を整理し、「選ばれる高専」に向けた次の一手を探りました。
「なぜ我々は高専人になったのか?」を改めて考えさせられた内容を解説します。
・株式会社エニバ 取締役COO 渡邊 友章氏
・釧路工業高等専門学校 校長 長尾 和彦氏
・岐阜工業高等専門学校 校長 大塚 友彦氏
・鹿児島工業高等専門学校 校長 上田 悦子氏
高専の広報について深掘りするテーマは下記。
《分科会2のトークテーマ》
\ 気になる見出しをクリック!/
事前のアンケートで、高専を知ったきっかけは「身近な知人・親族からの情報」という声が多数ありました。この分科会の内容をみて、身近な人と高専について話す機会が増えたら嬉しいです!
取り組み事例を教えてください!

最初に、具体的な広報の取り組み事例についてお伺いしました。各校が独自の魅力を活かして地域との接点を増やし、高専全体の志願者増加や認知拡大を図っています。
《釧路高専の広報事例》
釧路高専は北海道以外から入学する学生が増加傾向にあり、さらに増やす活動をしています。
(2025年度は道外の学生が191名在籍)
全国各地に点在する高専は地域に根差した学校である一方、如何にして全国に認知を広げるかが課題です。全国のリアルイベント参加や地元での出前授業の実施、オンラインイベント参加など、広域に学校の魅力を発信しています。
《岐阜高専の広報事例》
岐阜高専は地域教育支援に力を入れています。令和6年度は、約6000名の小中学生が出前授業や公開講座などに参加しました。最寄りの商業施設で開催するサイエンスデーでは、子どもたちがものづくりの面白さを体験できる企画を提供しています。
イベントを通じて理系志望の子供が増加し、岐阜高専を受験する学生の層が広がりました。オープンキャンパスでは在校生が説明役を担い、来場者に学生の成長を直接伝えています。
《鹿児島高専の広報事例》
鹿児島高専では従来型イベントに加え、プロの支援を受けて一般読者目線でも分かりやすい広報資料へ刷新しました。高専関係者だけで資料を作成すると情報過多になってしまうため、外部の視点を取り入れています。
みんなの高専チャンネルやテレビ各局へ積極的に出演し、メディア露出を増やしていました。高専OG初の校長という話題性や著名な卒業生のネットワークを活かして、認知拡大を図っています。
各高専の広報活動で共通していたが、対面イベントの主催や参加に積極的な点です。在校生が中学生と直接言葉を交わし、学校のリアルな雰囲気や学生の成長を伝える機会を作っていました。
全国で各高専が特色あるイベントを開催しているので、ぜひ参加してみてください。
本分科会で、最寄り地受験制度が話題に上がったので解説します。
最寄り地受験制度とは?
国立高専の最寄り地受験制度とは、学力検査を志望校以外で受験できる制度です。遠方の高専を自宅近くで受験できるため、受験生の心身の負担や家計の負担を軽減できます。
2025/11/7に発表された令和8年度の受験会場一覧はこちら。
➡「最寄り地等受験会場」に〇が付いている会場では、全国の国立高専を受験できます。
※公立高専、市立高専は制度が異なりますので注意してください。
オープンキャンパスで他高専の広報をしたところ、最寄り地受験を希望する学生が増えたという事例が紹介されました。学生寮がある高専が多いので、自分が求める学びのために遠方の学校も選択できます。
近隣の学校に限らず、全国の高専について知る機会がより重要だと感じました。
高専を選ぶ理由とは?

高専は親や兄弟が通っていたから自分も受験するという、リピーターが多い学校です。釧路高専の長尾校長がラジオ番組で聴いた、素敵なエピソードが象徴しています。
高専で楽しそうにしている兄をみて、
妹も受験を決めた―
地元の高専に不合格だったお兄さんは、2次募集で遠方の高専を受験して見事合格。学生寮に入って楽しく過ごしているそうです。充実した日々を過ごす兄の姿を間近で見て、妹も高専を受験したというお話でした。
入学して初めて実感する「玄人にしかわからない良さ」が、身内を通じて伝わっています。家族以外の層にも学校の魅力を知ってもらうため、積極的な広報活動が今後も必要です。
岐阜高専の大塚校長が紹介したのは、オープンキャンパスに参加した保護者や中学生のアンケート結果です。
《高専を受験してみてもいいと思った理由は?》
- 専門性の高さとやりたいことができる環境
- 在校生が夢中に取り組む姿へのあこがれ
- 実社会とつながった価値創出の経験
- 国際交流・海外研修で広い視野を持った挑戦
- 学生が地域と共に学び、活躍する姿
- 寮見学を通して得られた安心感
- 就職・進学などの進路面の強み
寄せられた声に共通しているのは、オープンキャンパスの会場に足を運んだからこそ伝わる高専の強みや安心感でした。
鹿児島高専の上田校長はアンケート結果に共感し、選ぶ理由として一つ追加してくれました。クラブ活動や応援団など、充実した課外活動に魅力を感じて高専を選ぶ学生もいるそうです。
高専の最大の魅力とは?

高専最大の魅力として導き出された結論は、5年間を自由に使える環境です。各学校から様々な独自の強みが挙げられましたが、すべてが大学受験に囚われない自由な時間に結びつきました。
釧路高専では、クリエイター教育を積極的に授業に取り入れています。ゲーム制作やプロジェクションマッピングなど、クリエイティブな活動と制御技術を融合した取り組みです。時代に合わせて授業のカリキュラムを柔軟に更新できる点は、高専ならではの魅力です。
岐阜高専の大塚校長からは、魅力・特色として3つ紹介がありました。
- 理論×実践力のバランス
- 知恵を絞る実践教育
- 好きなことに夢中になれる校風
知恵を絞る実践教育の代表的な取り組みが、地元企業と連携した実践型PBLの授業です。学生は企業が抱える実際の課題に向き合い、第一線で活躍するエンジニアと共に解決策を導き出します。
PBL(Project Based Learning)とは?
PBLはProject Based Learningの略称で、日本語では課題解決型学習と呼ばれています。自ら課題を見つけて解決することで「課題発見能力」「解決能力」「実践能力」を育む学習方法です。
鹿児島高専の上田校長が語った「のびのびとした5年間」という言葉が、高専の魅力の本質を突いていました。15歳から大学受験にとらわれず、興味がある分野の勉強やモノづくりに熱中できます。途中で新たな分野に興味が湧いたとしても、5年間あれば柔軟な方向転換が可能です。
やりたいことを実現するための機会や設備が整っていて、併走してくれる教員もいます。用意された環境を使いこなせば、なりたい自分へ着実に近づける学校です。
高専受験を迷う理由とは?

校長先生方のお話を総合すると、高専受験をためらう最大の理由は情報不足に集約されます。高専へ進学する中学生は全体の1%以下と少なく、全国的に見ても学校の数自体が多くありません。
身近に成功者がいないため、
「15歳からの寮生活」
「早期の進路選択」
「留年の多さ」
といったネガティブな印象が強く残ります。
釧路高専の長尾校長が語った通り、最も懸念される留年に対してはサポート体制が整っています。5年間という長期的な視点で見れば、失敗よりも成功体験を積む機会の方が多い環境です。入学して初めて実感できる独自の魅力が、高専には数多くあります。
岐阜高専の大塚校長は、オープンキャンパスに参加した保護者や中学生のアンケート結果を紹介しました。
《高専受験を迷う理由はなんでしたか?》
- 早期の専門分野選択への不安
- 進路の柔軟性への誤解
- 学力・難易度の不安
- 学校生活のイメージ不足
- 寮生活・通学の不安
- 他校との比較による迷い
- 高専自体に関する認識不足
参加者がイベント参加前に感じていたリアルな声ですが、オープンキャンパスを通じて不安の大部分は解消されています。中学生や保護者が高専に興味を持ち、学校に足を運ぶ機会を積極的につくることが今後の課題です。
鹿児島高専の上田校長からは、高専出身の女性校長視点で課題が指摘されました。高専生の中でも女子学生の割合はさらに低く、検討段階での情報が極端に不足しています。情報がないために「本当に大丈夫なのか」という、強い不安を抱えているのが実情です。
体験談
僕が高専の存在を知ったのは、友人と受験する学校について話をした中学2年生の秋頃。当時は「高専って何?」という状態で、就職・進学といった表面的な強みだけに惹かれていました。
中学3年生でオープンキャンパスに足を運び、初めて学校の魅力や活気に気づきました。
もっと早く高専という選択肢を知り、各種イベントに参加する機会を作れたらよかったというのが本音です。早期に高専を知ってイベントへ参加できれば、志願者の増加だけでなく入学後のミスマッチ防止にもつながります。
心理的ハードルを下げるには?

受験生の心理的なハードルや不安を取り除く、各校の取り組みが紹介されました。
釧路高専の学生サポートセンターでは、学習面以外で支援が必要な学生をコーチングで丁寧にケアしています。学習でも勉強が苦手な学生を対象に、SSL(Special Supplementary Lesson)と呼ばれる特別補習で数学と物理の学習をサポートしています。学生同士で教え合う環境を整え、受講した学生の88%が成績向上しているそうです。
SSLについて「みんなの高専チャンネル」で紹介されていました。岐阜高専の大塚先生が当時の校長として解説してくれています。

早期の専門分野選択に対して「途中で興味が変わるかもしれない」と不安を抱く中学生や高専生は多いです。岐阜高専ではこの変化を興味が増えた成長の証として前向きに捉えるように指導しているそうです。
進路の幅が制限されたり、専門知識に偏った視野の狭い人間になったりする不安も頻繁に耳にします。しかし、実際の授業では社会の仕組みを知る実践的な機会が多く、学生の進路や視野は確実に広がります。
鹿児島高専ではウェルビーイングを合言葉に、学生だけでなく教員含めて学校全体がハッピーになる教育を推進しているそうです。自分をご機嫌にして自己肯定感を高める実践的な指導内容が、シラバスにも織り込まれています。
OB・OGにどんな発信をして欲しい?

各高専の先生方がOBやOGに求める役割は共通していました。
自身の経験や後輩の活躍を
社会に発信してほしい
高専は親子や兄弟で入学するリピーターが多いことから、実際に高専を経験した生の声が何よりも重要だとわかります。在校生はPBL活動などの実践的な課題解決プログラムを通じ、学生のうちから社会課題へ挑む頼もしい存在です。
自身の高専での経験や育っている後輩の活躍を、職場や周囲の小中学生、メディアなどを通じて広めていきましょう。高専を知らない層へ生の声を届ける取り組みが、社会からの信頼と高専ブランドの向上につながります。
高専全体のブランド力向上は、企業支援や就職・転職市場での待遇向上などのかたちで返ってきます。
まとめ:高専人だけが知る良さを社会に広げよう!

分科会2の議論で明確になった課題は以下に集約されます。
高専人だけが知る高専の良さを
社会にどう伝えるのか
社会全体で見れば高専生はマイノリティーであり、学校そのものを知らない方がまだまだ多いです。高専を選択肢として認知してもらった上で、受験生が後悔しない進路選択をするサポートが必要です。
分科会2は、校長先生方からの共通したメッセージで締めくくられました。
一緒に高専全体を
盛り上げていきましょう!
一つ一つの高専の力は大きくないかもしれません。しかし、学校の枠を超えて高専を一つの団体として捉えるとものすごいパワーを持っています。在校生や卒業生、法人に関わる全ての方々でコミュニティを形成し、高専ブランドの価値を高めていきましょう!
ベースになるのが、今回のイベントを企画してくれた高専人会だと思っています。ぜひ、「kosenjin community」で交流しましょう。
高専人会については下記記事でまとめています。






