2023年4月、19年ぶりに高専が新設されました。神山まるごと高専の誕生を皮切りに、「滋賀県」「愛知県」「福岡市」と自治体主導で高専設立の動きが続いています。なぜ今、新設の高専が求められているのか、既存の学校とは何が違うのか。
その答えを、2026/3/1に名古屋で開催された高専人サミットで直接聞いてきました。各都市の高専新設に最前線で関わる方の話から、設立する背景や最新動向、共通の課題が分かりました。
この記事では、僕が卒業した既存高専と対比しながら、現地で得た新設高専の最新情報を解説します。ぜひ、後悔しない進路選びの判断材料にしてください。
新設に向けたフェーズが違っても、教員の採用という課題は共通です。「教育は人がすべて」という最後の言葉が印象的な会でした。
高専人サミット2026 in NAGOYA

高専人サミットは、一般財団法人高専人会が主催する年に一度の「高専の大同窓会」です。第1回の東京、第2回の大阪に続き名古屋で開催され、600人以上の高専人が集まりました!
《高専人サミット2026 in NAGOYAの概要》
日時
2026年3月1日(日)13:00開会
※前日2月28日(土)に前夜祭
ハッカソンも同時開催
会場
STATION Ai
➡今話題の最先端イノベーション施設。
参加資格
高専生、高専卒業生、高専教員及び関係者
(2026年度入学予定者、高専保護者含む)
高専人サミット2026 in NAGOYAの様子は、noteでまとめています。気になる方はチェックしてみてください。

高専新設が切り拓く未来:分科会4

高専人サミットの分科会4のステージには、高専新設の最前線で活躍する方々が登壇しました。
2023年4月に誕生した神山まるごと高専が「ガイアの夜明け」で特集され話題を呼びました。学費の実質無償化や起業家育成など、斬新な教育モデルに注目が集まっています。19年ぶりの高専開校を皮切りに、滋賀や愛知、福岡で自治体主導の高専設立が加速中です。
なぜ今、再び高専が社会に求められているのか。既存の枠組みにとらわれない、新しい教育のあり方や次世代教育が持つ可能性を語り合いました。僕が卒業した既存高専の仕組みと対比しながら、熱いセッションの内容を解説します。
※既存高専として出している情報は一例です。
・一般社団法人日本ディープラーニング協会
専務理事 岡田 隆太朗氏
・神山まるごと高専 学校長 五十棲 浩二氏
・福岡市教育委員会 指導部課長 大坪 弘明氏
・滋賀県立大学高専 開設準備局 木村 清和氏
・愛知県県民文化局 学事振興課長 渡邉 太一氏
ご登壇頂いた方々とはご挨拶をさせて頂きましたので、引き続き情報を更新します!
高専人サミットで聞いた新設高専の情報です。(2026年3月1日現在)
| 高専名 | 神山まるごと高専 | 滋賀県立高専 (仮称) | 愛知県立高専 (仮称) | 福岡市立高専 (仮称) |
| 運営主体 | 学校法人 神山学園 (私立) | 公立大学法人滋賀県立大学 (公立) | 愛知公立大学法人 (公立) | 福岡市教育委員会 (公立) |
| 所在地 | 徳島県神山町 | 滋賀県野洲市 | 愛知県名古屋市千種区 | 福岡県福岡市城南区・早良区 |
| 開校(予定) | 2023年4月 | 2028年4月 | 最短で2029年4月 | 2029年4月 |
| 定員(1学年) | 40名 | 120名 | 40名 | 80名 |
| 学科 | デザイン・ エンジニアリング学科 | 工学系総合学科の1学科 | デザイン情報工学科 | 情報工学系の1学科 |
| コース | ‐ | 4コース(2年から分かれる) 〇情報系、〇電気電子系、 〇機械系、〇建設・環境系 | 2コース 〇ロボティクス、 〇AI・デジタル | 未定 |
この分科会は、新設高専が抱えるリアルな課題を参加者で共有し、具体的な打開策を探るコンセプトでした。すでに開校した神山まるごと高専の実績や知見も活かして、解決の糸口を見つけていきます。
新設高専の概要と特色
分科会の冒頭で、新設高専4校の紹介がありました。
《新設高専一覧》
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神山まるごと高専
神山まるごと高専は、
起業家たちが心から欲しいと思った
理想の学校をつくる
というコンセプトで、約20年ぶりに設立された全寮制の高専です。同校が目指す人物像として掲げるのが
モノをつくる力で、コトを起こす人
「モノをつくる力」は、既存の高専教育ですでに証明されています。僕自身、高専卒の技術職として会社に属して働いていますが、大卒や院卒に劣っていると感じたことはありません。
神山まるごと高専はさらに先を見据え、培った技術を組織に属さずに社会に実装する力を養っています。既存の枠組みを超える一歩先のビジョンが、「コトを起こす」に込められた起業家育成を目指す学校の正体だと感じました。
「起業家」という言葉のインパクトから、技術を十分に学べないのではないかと誤解されるそうです。しかし、既存高専と同様に土台となる「モノをつくる力」もしっかり学んでいます。
滋賀県立高専(仮称)
滋賀県立高専は、「高専空白地帯」であった琵琶湖の南にあたる野洲市に設置される公立高専です。2028年4月の開校に向けて、文部科学省への認可申請の準備が本格化しています。
同校の特色は、デジタル・AI時代に欠かせない情報技術を軸としたカリキュラムです。2年次から4コースに分かれますが、プログラミング等の基礎スキルは入学直後から学び始めます。5年間で環境分野と情報技術といった工学領域を横断して学び、大学レベルの高度な専門知識・技術を習得します。
スローガンに
知行合一
を掲げており、知識と実践力を統合した真の技術を磨く教育方針です。
2年次から分かれる4コースでは、1クラス約30人の少人数編成で専門性を深めます。各コースにそれぞれ9名の教員が配置されるため、密度の高い指導体制が魅力です。地元企業とのPBLやインターンシップなど、実践的なプログラムが低学年から実施されます。
PBL(Project Based Learning)とは?
PBLはProject Based Learningの略称で、日本語では課題解決型学習と呼ばれています。自ら課題を見つけて解決することにより「課題発見能力」「解決能力」「実践能力」を育む学習方法です。
学校併設の学生寮は、収容人数を約50名に絞った小規模な運用が計画されています。滋賀県内からアクセスしやすい野洲市の立地を活かし、寮の利用は3年生までの各15名程度に限定する方針です。4年生以降は寮を離れ、自宅や外部での一人暮らしから通うかたちに切り替えが予定されています。
分科会の中で、設計がほぼ完了した最新キャンパスのCG映像がお披露目されました。高専人サミットが初出の情報につき詳細な記載は控えますが、非常に広大で先進的なデザインです。設備などの機能面も充実しており、既存校の卒業生としては羨ましい限りの仕上がりでした。
愛知県立高専(仮称)
愛知県立高専は、名古屋市千種区への設置が構想されている新しい公立高専です。最短で2029年4月の開校に向け、プロジェクトが進んでいます。
デザイン情報工学科の1学科制で、
社会課題を本質的に捉えた魅力あるサービス・製品を創出できる実践的な技術者
を育成します。
1年次は一般教養含めて基礎を学び、2年次から「ロボティクス」「AI・デジタル」に分かれて専門性を高めるカリキュラムです。
既存の愛知総合工科高校に併設して、新校舎の建設は最小限に抑える計画です。2026年4月からは付属中学の併設も予定されており、相乗効果が期待されます。
運営元が「愛知公立大学法人」のため、大学との強い連携も特色の一つです。
福岡市立高専(仮称)
福岡市立高専は、2025年2月に新設が公表され、具体的な検討がスタートした公立高専です。愛知と同じく最短で2029年4月の開校を目標とし、高度なデジタル人材の育成を掲げています。
情報工学系の1学科制で、コースについて、「情報科学」と「社会デザイン」というキーワードが出ていますが詳細は未定。日本の玄関口として栄えてきた福岡だからこそ、国際やビジネスについて特色を持たせたいとの想いも語られました。
同校の特徴は、学年ごとに学び場が変わる「2キャンパス制」です。低学年は博多工業高校に併設される校舎を利用し、高学年になると市内の既存施設へと拠点を移します。
少子化の時代になぜ高専を新設するのか
少子化の時代に、なぜ立て続けに高専を新設するのか。地域が抱える課題や強みを活かした学校新設の背景がそれぞれあり、とても興味深かったです。
《高専新設の背景》
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特にこれから開校する3校は、地元地域の課題解決や強い要望によって設立が計画されていました。
神山は「学校設立」が起点
神山まるごと高専が新設された原点は、「神山町に新しい学校をつくる」という地域発のプロジェクトです。中でも高専が選ばれたのは、大学受験に縛られずに起業家を育成するため。
一般的な高校は進学実績というKPIに縛られるため、起業家育成という独自のビジョンと相性が悪いです。15歳から20歳の多感な時期を過ごす高専の仕組みを活かせば、面白い教育ができるという結論に至りました。
受験勉強に時間を奪われず、社会実装に向けた実践的なカリキュラムに5年間をフル活用できます。就職や大学編入という既存高専の枠組みを活用しつつ、「起業」という新たな選択肢を実装した学校です。
滋賀県は「空白地帯の解消」が起点
滋賀県立高専は、技術教育機関の「空白地帯解消」のために計画がスタートしました。
滋賀県は京都や大阪だけでなく、東海方面へのアクセスも良い関西屈指の工業県です。県内に工場を構えている数多くのメーカーが、高専卒の技術者を高く評価しています。
特に建設コースは建築ではなく「土木領域」に特化し、県内インフラを支える人材不足の課題にアプローチしています。土木技術者を育成する高等教育機関が少ないという、地元の強い要望に応える方針です。
多額の資金を投じてキャンパスを整備し、地域産業を牽引する次世代のエンジニアを育成します。
愛知県は「製造業のDX推進」が起点
愛知県立高専の新設は、製造業のDXを推進する「デジタルものづくり人材」の育成が目的です。
生産年齢人口の減少による労働力不足に加え、急速なデジタル化による産業構造の変化が背景にあります。製造業が中心の愛知県として、情報技術を駆使して現場を牽引できる技術者が必要です。
高専は国から設置を促す声がある上に企業からの評価も高いため、県としても新設に向けて方針を固めました。
福岡市は「工業高校の見直し」が起点
福岡市立高専の新設構想は、博多工業高校の学科見直しから始まりました。
福岡市内には情報通信系の企業が多く、市立の学校計画として情報技術教育への注力が不可欠です。地元企業で即戦力となる人材の育成は3年制の高校では難しいため、5年制の高専へと舵を切りました。
高等教育機関である高専は設立のハードルが高いとの声があったものの、いい学校を作ろうと決断されました。頭も動くけど手もしっかり動く高専生に、地元企業や大学から大きな期待が寄せられています。
新設高専の今後の展望と課題
最後に、新設高専が考えている今後の展望やチャレンジ、そして共通の課題を教えて頂きました。
新設高専の今後の展望やチャレンジ
神山まるごと高専の五十棲校長は、「人間の未来を変える」を目標に掲げていました。
設立されて3年、変化が激しい情報工学の分野に生成AIをどう活用するのか。私立の学校だからできるフットワークの軽さを活かし、時代の波を捉えたカリキュラムの更新を続けます。
また、既存高専とのサマーキャンプを計画するなど「持たざる者の戦略」を立てて、お互いが補完し合う関係を目指してチャレンジしていくそうです。
滋賀県立高専は、化学系の学科がない中でも女性エンジニアの育成に力を入れていきたい。また、地元企業の要望で作る高専だからこそ、地域との連携を学生主導で進めていきたいと熱く語られていました。
愛知県立高専は2029年の開校に向けて、他高専の取り組みを参考にしながら学校のカリキュラム構想やPRを進めていく段階。少しでも特色のある取り組みをしていきたいとお話頂きました。
最後に福岡市立高専。教育委員会が運営する高専のため、高専で作り上げた学びを小中学校に活かしていきたいと語られていました。
新設高専が抱える課題は「教員採用」
新設の高専4校が学校運営で抱えている問題は共通でした。
専門分野の教員が足りない
特に4高専共通の情報工学は、最先端のAI知識が欠かせません。地方への移住が必要なケースもあり、教員集めに苦労されているようです。
教育は人がすべて。
新設の4高専で教員として働きたいという方は、ぜひ連絡を取ってみてください!
まとめ:新設高専は独自の魅力が満載!

新設高専は、既存高専の枠組みに各高専担当者の想いや地域との関わりが加わった魅力溢れる学校でした。
これから受験を控える小・中学生は、引き続き情報をウォッチしつつ、ぜひこれからできる学校に足を運んでみてください。既に高専に入学している学生も、新設高専の斬新な取り組みから学生生活のヒントが得られるかもれません。
4校が抱える共通の課題は「教員の採用」。優秀な人を育てるには優秀な人に教わる必要があります。各校の取り組みに共感頂ける方は、ぜひ一度ご連絡してみてください。
この記事から、一人でも高専進学の希望者や教員希望者が生まれてくれたら嬉しく思います。
引き続き、各校の情報を記事にまとめていきます!
「ガイアの夜明け」神山まるごと高専の特集をみてまとめた記事はこちら👇






