取材の冒頭で決勝の結果が出た瞬間のことを聞くと、返ってきたのは、
緊張と「安堵」という言葉でした。
正直にいうと、画面越しに試合の進捗を見ていても、勝敗はわかりませんでした。
でも、東京高専の学生さんによると、スコアからある程度結果が見えていたそうです。
それでも緊張はしていて、
1位に「東京」の文字が出たときは、
安堵に近い気持ちだったといいます。
東京高専は、前年大会で準優勝でした。
今回の結果について、豆田匠音さんには、
「先輩の後を継げた」
という気持ちと、
「自分のアルゴリズムが
きちんと動いてくれてよかった」
という思いがあったそうです。
高専プロコン2026、競技部門優勝―
その栄冠をつかんだのが、
東京高専の「อุดรธานี(ウドンターニー)」です。
優勝したチームの話を聞くと、つい「強さの秘密」を探したくなります。
でも今回の取材で、僕が受け取ったのは少し違う印象でした。
決めるところは自分たちで決める。
分けられる仕事は分ける。
動かせるところは、仕組みにして任せる。
そのすべてを支えていたのは、
一緒に作る仲間だったのだと思います。
高専プロコンの結果はこちら
高専コンテストの取材第1弾は、
高専DCONの豊田高専「Kanro AI」でした。
第1弾はこちら

第2弾は、第37回高専プロコンの競技部門で優勝した東京高専の学生に、大会後に話を聞きました。
3度の1位|東京高専が見せた強さ
第37回高専プロコンは、2026年10月10日・11日に香川県高松市で開かれました。

(説明図・寮ラボ作成)
2026年の競技部門「ヘキサうどん」は、六角形のマップ上で「巡回車」と「補給車」を動かし、うどんを集めるプログラミング競技です。
うどんを集めるのが巡回車で、巡回車に燃料を届けるのが補給車です。試合開始前にマップを確認し、与えられた台数の車を巡回車と補給車に振り分けます。
競技内の各日には、自分たちの車の位置や燃料、他チームの位置、道路の混雑状況などを踏まえて、日ごとの行動計画が必要です。
勝敗はまず、集めたうどんの種類数で決まります。種類数が同じ場合は、日ごとの種類数の合計などが順位を決める基準です。

(提供:東京高専プロコンゼミ)
配信を見ていた僕は、車が動く様子は分かっても、実際に何を考えて動かしているのかまでは理解できていませんでした。
学生さんからも、こんな言葉が出ました。
「自分たちでも見てもわからない、
自分たちの行動はプログラムが決めてくれるので、スコアの良し悪しぐらいしかわからないです。」
見た目以上に、複雑な判断が求められる競技だったのです。
競技部門は、初日の1回戦、そして2日目の準決勝、決勝と進みます。
東京高専の「อุดรธานี」は、
このすべてで1位でした。
決勝は10チームすべてが種類数25で並び、累積の種類数などで順位が決まりました。
| 段階 | 試合の規模(公式) | 東京高専の順位 |
| 1回戦 | 16×16・4台 | 1位 |
| 準決勝 | 24×24・5台 | 1位 |
| 決勝 | 32×32・7台 | 1位 |
安定してスコアを出す、最後まで止まらずに動く
大会前に特に時間をかけたのは、
競技内の複数日を見据えたアルゴリズムの設計
だったそうです。
1日ごとの最適な行動ではなく、
3日分を見据えてよりよい結果につながる行動を考える。
そんな仕組みを作り込んでいました。
また、安定してスコアを取るための考え方も聞きました。他校のやり方はわからないので比べられないと前置きしつつ、
日によってスコアが上下しすぎないよう、
平均して同じようなスコアを出せるよう意識していた
と教えてくれました。
たしかに配信を見ていても、競技内の毎日、東京高専が常に1位だったわけではありません。
目先の1日だけでなく、
試合全体でよい結果を出すための設計
だったのだと思います。
もう一つ印象に残ったのは、
「人が操作しない前提の設計」です。
「人が操作した時に起きるヒューマンエラーの方が影響が大きい」
だから、最初に起動ボタンを押したら、
「操作せずとも
最後まで動くように設計しました」
競技内の各日の行動計画はもちろん、補給車の台数も人が手動で決めたわけではありません。
マップによっては複数の台数から選べるようになっていて、最初の選択の時間に計算とシミュレーションで決める仕組みだったそうです。
東京高専は、3試合すべてのマップで補給車を1台にしていました。僕は最初から決めていた作戦なのだと思っていましたが……。
「僕らが1台だって
決めたわけではないです」
それが最適だったのかは、本人もまだわからないと話していました。
人がその場で答えを出すのではなく、
よりよい答えを導き出す仕組みをあらかじめプログラムしておく。
「まさにプログラミングコンテストだな」
と感じました。
この考え抜かれたプログラムとアルゴリズムが、優勝につながったのだと思います。
人がアイディアを出し、AIが実装方法を考える|最後に決めるのは人
AIの使い方についても聞きました。
今回のアルゴリズムは、AIがすべて作ったわけではありません。
「AIだけでアルゴリズムを
構築させるのは難しかった」
学生たちは、まず自分たちで方針やアイディアを考えます。その方針やアイディアをいきなり実装するのではなく、AIにはまず設計書を書いてもらうそうです。
できあがった設計書を読み、
AIと何度もやりとりして修正を重ね、
1つの設計書に仕上げていく。
その設計書を別のAI(別のセッション)に渡して実装し、さらに別のAIで正しいかを検証します。
スコアを計測するAIも使っていたそうです。
しかし、AIが作ったものをそのまま採用するわけではありません。
最終的にどのロジックを採用するかは、
「僕らの方で判断する」と話していました。
この話を聞いて、僕自身が普段やっていることとよく似ているなと感じました。
僕も自分専用のツールを作るときは、まずAIと壁打ちをしてアイディアを整理します。その内容をClaude Codeで仕様書にまとめ、仕様書をもとにCodexで実装する流れです。
できあがったものは、Claude Codeで仕様書と照らし合わせて確認します。修正が必要なら、再びCodexに依頼するという進め方です。
僕が高専生だったころには、今のようにAIと相談しながらプログラムを作る環境はありませんでした。
それが今では、
AIと一緒に設計を考えて実装し、
別のAIで検証までできるようになりました。
そして何より驚いたのは、今回取材した学生たちが、すでにそうしたAIの使い分けを実践していたことです。
僕自身の開発経験とも重なる部分があり、印象に残りました。
「友達の力がなかったらここまでたどり着けなかった」

(提供:東京高専プロコンゼミ)
この取材を通して、
中学生や保護者に一番届けたいと思ったのは、
技術の話以上に「仲間」の存在です。
高専に入ってよかったことを聞くと、吉田宗司さんが挙げたのは、同じ分野に興味を持つ人が集まっていることでした。
吉田さんは、中学生のころからプログラミングに取り組んでいたそうです。
「中学校の時は、
一緒に開発する友達がいなかった」
そんな吉田さんが高専で出会った仲間の一人が、豆田匠音さんです。
豆田さんは1年生のときにプロコンゼミに入り、吉田さんに教わりながらプログラミングを学んでいったといいます。
今回の優勝を振り返って、豆田さんからはこんな言葉がありました。
「友達の力がなかったら
ここまでたどり着けなかった」
中学校では、一緒に開発する仲間がいなかった。
高専で仲間と出会い、一緒に開発し、
全国大会の優勝までたどり着いた。
同じことに興味を持つ友達がいる。
専門知識を持った先輩や後輩がいる。
そんな仲間と出会い、一緒に挑戦できること。
それも、高専で学ぶ大きな魅力のひとつなのだと思います。
学生たちが実践していた、“会社”のようなプロジェクト運営
チームでの開発の進め方も聞きました。
通信やアルゴリズム、表示プログラムなど、仕事を細かく分けて、
「お互いに干渉しないような
仕事分担をしていた」
そのため、特にぶつかることはなかったそうです。
役割を分担し、定期的に状況を確認する。
細かい部分は、それぞれの担当者に任せる。
これは、僕が会社のプロジェクトチームで経験してきた仕事の進め方とよく似ていました。
高専DCONの学生たちを見たときや、神山まるごと高専を取り上げた「ガイアの夜明け」を見たときにも、同じように感じた記憶があります。
僕が学生だったころには、こうした経験の場を自分で作ることができませんでした。
学生のうちから仲間と役割を分担し、
一つの目標に向かって開発を進めている。
こうした経験は、社会に出てからも大きな強みになると思います。
取材を通して感じたこと
取材をお願いしたのは、訪問のわずか2日前でした。本選が終わってから、配信を見て申し込んだためです。
そんな急なお願いにもかかわらず、学生2人と指導教員の先生が時間を作ってくださいました。
学生たちは、一つひとつの質問に真摯に答えてくれました。競技のルールなど、こちらが理解しにくい部分も丁寧に補足してくれたので、とても話しやすかったです。
取材後には校内を案内していただき、プロコンゼミがある棟の前で写真も撮らせていただきました。

学生たちの誠実な姿勢が印象に残り、
直接お話を聞けて本当によかったです。
画面越しには見えなかった、本番までの積み重ね
僕自身、大会の配信を見て、ルールはある程度理解したつもりでした。
しかし、限られた検討時間や競技時間の中で、学生たちが実際に何を考え、何をしていたのかは、配信だけでは分かりませんでした。
直接話を聞いてみると、
想像していた以上に奥深かったです。
特に驚いたのは、競技当日よりもずっと前から準備が始まっていたことです。
4月1日の時点で、競技の基本的なルールは募集要項で公開されていました。ただ、細かい仕様は、その後に少しずつ明らかになっていきました。
チームは仕様が固まる前の4月から、仕様を仮定して準備を進めていたそうです。
当日の結果だけでは見えない、
長い準備の過程を知れたことが、
今回の取材の大きな収穫でした。
優勝の瞬間に返ってきた言葉は、
緊張と「安堵」でした。
その後ろにあったのは、
「先輩の後を継げた」という気持ちと、
「自分のアルゴリズムがきちんと動いてくれてよかった」という思い。
そして
「友達の力がなかったらここまでたどり着けなかった」という言葉。
高専に入れば誰でもこうなる、
というわけではありません。
ただ、
どんな仲間と出会い、何に挑戦できるのかは、
進路を考えるうえで大切な視点だと思います。
チームプロフィール
「อุดรธานี(ウドンターニー)」
(東京工業高等専門学校・プロコンゼミ)
| 氏名 | 学年・学科 | 役割 |
| 豆田 匠音 (まめだ たくと) | 4年・情報工学科 | チームリーダー |
| 吉田 宗司 (よしだ そうし) | 4年・情報工学科 | チームメンバー |
| もう1名のメンバー (お名前は掲載していません) | 4年・物質工学科 | チームメンバー |
指導教員:
松﨑 頼人 講師(情報工学科)
大会結果・受賞
1回戦・準決勝・決勝すべて1位
| 項目 | 内容 |
| 大会名 | 第37回全国高等専門学校プログラミングコンテスト |
| 競技名 | 競技部門「ヘキサうどん」 |
| 日程 | 2026年10月10日・11日 |
| 会場 | サンポートホール高松(香川県高松市) |
| 主催 | 一般社団法人 全国高等専門学校連合会 |
| 主管校 | 香川高等専門学校高松キャンパス |
| 受賞 | 競技部門 優勝 優勝チームに授与された賞: 文部科学大臣賞 情報処理学会若手奨励賞 電子情報通信学会若手奨励賞 |
| 公式結果 | 高専プロコン公式サイト 第37回大会 本選結果速報 |
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