お子さんの進路候補に
「高専」が出てきた保護者の方へ
- 普通高校と高専は、何が違う?
- 5年間学んだあとは、就職? 進学?
- まずは、高専の全体像を知りたい。
高専は全国に58校しかなく、進学する中学生はおよそ100人に1人です。身近に経験者がいないまま、高専について調べ始めた保護者の方も多いと思います。
僕は高専で5年間過ごした卒業生です。寮生活や成績の浮き沈みも含めて、高専のリアルを体験してきました。現在はその実体験をもとに、高専情報サイト「寮ラボ」を運営しています。
高専は、中学卒業後から5年間通う高等教育機関です。1年生から専門の勉強が始まり、卒業後は就職と進学の選択肢があります。
中学3年のうちに、進みたい分野や学科をある程度決めるのが一般的です。
この記事では、高専の定義、ほかの学校との違い、学科、卒業後の進路、入試やお金、通学の確かめ方、留意点を解説します。
この記事は、高専をすすめるためのものではありません。
高専は15歳から5年通う高等教育機関
《高専の基本3つ》
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高校ではなく「高等教育機関」
高専の正式名称は「高等専門学校」です。中学校を卒業した人が入学し、通う年数は5年と法律で決められています(学校教育法第117条・第118条)。
商船に関する学科だけは5年6か月です。
法律が定める目的は「深く専門の学芸を教授し、職業に必要な能力を育成すること」です(学校教育法第115条)。
文部科学省は高専を、実践的・創造的な技術者を養成する5年一貫の高等教育機関と説明しています(出典:文部科学省「高等専門学校(高専)について」・2026年9月20日確認)。
高専は、大学や短大と同じ「高等教育機関」に区分されます。名前は「専門学校」に似ていますが、学校の区分が違います。
ここが、高専の話でいちばん最初につまずくところだと思います。
高専がつくられたのは1962年(昭和37年度)です。準学士の称号と専攻科の制度が始まったのは1991年度(平成3年度)でした(出典:独立行政法人国立高等専門学校機構「国立高等専門学校の学校制度上の特色」・2026年9月20日確認)。
全国に58校|国立・公立・私立がある
高専は全国に58校あります。内訳は国立51校・公立3校・私立4校です(令和7年度/出典:文部科学省「高等専門学校(高専)について」・2026年9月20日確認)。
在学者は約53,000人、入学定員は10,535人です(同)。
国立の51校は、55のキャンパスに分かれています(出典:独立行政法人国立高等専門学校機構「高専とは」・2026年9月20日確認)。
公立は東京都立産業技術高専・大阪公立大学工業高専・神戸市立工業高専、私立はサレジオ工業高専・国際高専・近畿大学工業高専・神山まるごと高専です(令和7年4月現在/文部科学省)。設置者が違うと、学費も入試の仕組みも変わります。
わが家の県にあるとは限らない
高専は、すべての都道府県にあるわけではありません。
国立高専が置かれていない県もあれば、1つの道県に複数ある場合もあります。
高校・専門学校との4つの違い
《ほかの学校との違い4つ》
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まず、4つの学校を一覧で比べます。
| 高専 | 普通高校 | 工業高校 | 専門学校 | |
|---|---|---|---|---|
| 入学の時期 | 中学卒業後 | 中学卒業後 | 中学卒業後 | 高校卒業後が中心 |
| 通う年数 | 5年(商船に関する学科は5年6か月) | 3年 | 3年 | 1〜3年程度 |
| 卒業時の称号 | 準学士(称号であって学位ではない) | — | — | 学校・課程によって異なります |
| 卒業後に開く主な道 | 就職/大学3年次への編入学/専攻科 | 大学・短大・専門学校/就職 | 就職/大学・専門学校 | 就職/大学への進学(一部) |
※普通高校・工業高校・専門学校の欄は、一般的な区分をまとめたものです。学科や課程によって異なるため、詳しくは各学校の公式サイトで確認してください。
入学の時期と、通う年数
高専に入学するのは、普通高校や工業高校と同じ中学校卒業後です(学校教育法第118条)。専門学校は、多くが高校を卒業してから進みます。
違うのは年数です。
高専は5年間、普通高校・工業高校は3年間。高校3年+短大2年の5年と、同じ長さです。
学校の目的と、学ぶ内容
高専の目的は、法律で「深く専門の学芸を教授し、職業に必要な能力を育成すること」と定められています(学校教育法第115条)。
普通高校が広い基礎を学ぶ場だとすると、高専は最初から職業に必要な力を育てる場として設計されています。
だから1年生から専門科目が始まり、実習や実験の時間も多くなります。
これは「大学を卒業したのと同じ扱いになる」という意味ではありません。学ぶ内容の深さと、卒業したときの称号は別の話です。次の見出しで整理します。
卒業したときの称号
高専を卒業した人は「準学士」と称することができます(学校教育法第121条)。
準学士は称号であって、学位ではありません。
学位になるのは、卒業後に専攻科などで学び、審査を通った場合の「学士」です(国立高専機構「経済的支援」ほか・2026年9月20日確認)。
文部科学省の検討会は2026年8月28日の中間整理で、準学士が学位でないことによる不利益を挙げ、高専の本科卒業者に学位を出せる制度の整備が必要だとしています(出典:文部科学省「高等専門学校の機能強化に関する検討会」中間整理・2026年8月28日/2026年9月20日確認)。検討が続いている段階で、決まった話ではありません。
卒業後に開く道
高専を卒業すると、就職のほかに、大学へ編入学する道があります(学校教育法第122条)。
国立高専機構は「多くの国公私立大学の工学部等が高専からの編入学を受け入れています」と説明しています。
専攻科は、高専の中に置かれる課程です。修業年限は1年以上と定められていて、多くの高専では2年間です(学校教育法第119条)。
学校の種類を比べるときは、「どちらが上か」ではなく「どこで専門に入るか」で見ると、違いがはっきりしてきます。
1年生から専門を学ぶ
高専は、入学した年から専門科目が始まります。
だから、受験する時点で学科を選ぶことになります。
国立高専の本科には175の学科があります。系統でまとめると、機械・材料系34、電気・電子系42、情報系27、化学・生物系20、建設・建築系26、複合系18、商船5、その他3です(令和7年5月1日現在/出典:独立行政法人国立高等専門学校機構「高専概要2025」・2026年9月20日確認)。
「その他」には、経営情報・国際ビジネス・ビジネスコミュニケーションといった学科が入ります。工業系だけではありません。
どの系統の学科を置いているかは、高専ごとに違います。通える範囲の高専に、お子さんの関心に近い学科があるとは限りません。
多くの高専では、学科を選ぶのは中学3年の段階です。
ここが、高専を考えるときにいちばん慎重になったほうがいいところだと思っています。
卒業後の進路|就職・進学・起業
《卒業後の進路で押さえる4つ》 \ 気になる見出しをクリック! /
約6割が就職、約4割が進学
令和6年度に高専を卒業したのは9,755人です。このうち就職が58.2%、進学が38.7%でした(出典:文部科学省「高等専門学校(高専)について」・2026年9月20日確認)。
国立高専機構も、本科卒業者の約6割が就職、約4割が進学と説明しています。
高専は、就職にも進学にも進めます。
「高専に行くと大学に進めなくなるのでは」と心配される方がいますが、実際の数字はそうなっていません。だから、そこは安心してもらって大丈夫だと思います。
就職率と求人倍率
就職を希望した学生の就職率は、例年ほぼ100%です。直近5年では98.6%〜99.2%で推移しています(出典:独立行政法人国立高等専門学校機構「高専概要2025」・2026年9月20日確認)。
求人倍率は20倍を超えています(令和5年度/出典:同機構 企業向けリーフレット 2025年3月発行)。
この就職率は「就職を希望した人のうち」の数字です。卒業者全員のうちの割合ではありません。数字を見るときは、分母がどこかを確かめておくと安心です。
大学編入と専攻科
進学には2つの道があります。大学の3年次へ編入学する道と、高専の専攻科へ進む道です(国立高専機構)。
専攻科は2年間で、修了して審査を通ると「学士」が得られます。
起業という道もある
就職と進学のほかに、起業という道もあります。
国立高専機構は、卒業後の多様な進路の例として、専攻科への進学や大学への編入学、海外の大学への留学と並べて「起業する者」を挙げています(出典:独立行政法人国立高等専門学校機構「高専概要2025」・2026年9月25日確認)。国立高専には、学生がアイデアを形にできる「起業家工房」が全校に整備されています(同)。
ただ、卒業者の内訳として示されているのは就職と進学で、起業だけを取り出した数字は載っていません。「こういう道もある」と知っておくと、進路の見え方が少し広がると思います。

入試・お金・通学の確かめ方
《先に確かめたい3つ》 \ 気になる見出しをクリック! /
入試は推薦と学力が基本
国立高専の入試には、推薦による選抜と、学力検査による選抜があります(国立高専機構)。このほかに、帰国生徒を対象にした特別選抜を行う高専もあります(例:苫小牧高専)。
国立高専の学力検査は、国語・社会・数学・理科・英語の5教科で、マークシート方式です。全国の国立高専が同じ日に実施します。
公立・私立の高専では、検査する教科や選抜の区分が異なる場合があります。たとえば神戸市立工業高専は、推薦と学力に加えて「特色推薦」を行っています(2027年度学生募集要項)。志望校の募集要項を確認してください。
配点も、専願と併願の扱いも、推薦で何を見るかも、高専ごとに違います。
国立高専には、複数の高専を同時に志望できる制度(対象は地区や学科によって違います)、志望校以外の会場で受けられる最寄り地等受験制度、インターネットでの出願があります(国立高専機構)。募集人数が埋まらなかった場合に2次募集を行う高専もあります。
学費と国の支援制度
国立高専の入学料と授業料は、国が定めた額で全国共通です。寮の寄宿料も定められています。
2026年度(令和8年度)は、本科1年生から3年生の授業料が、世帯の収入にかかわらず就学支援金の対象になります(国籍・在留資格などの要件があります)。
本科4年・5年と専攻科は、高等教育の修学支援新制度の対象になる場合があります(出典:独立行政法人国立高等専門学校機構「経済的支援」・2026年9月20日確認)。
寮で暮らす場合は、寄宿料のほかに食費や光熱水費などの実費がかかります。機構の「経済的支援」のページには年間費用の目安が示されていますが、実際の額は高専ごとに違います。志望校の寮の案内で確認してください。
公立・私立の高専は、学費も支援制度も国立とは別です。各学校の公式サイトが基準になります。
多くの高専に学生寮がある
国立高専は、51校すべてに学生寮(男子寮・女子寮)があります。在学生の約3割が寮で生活しています(出典:独立行政法人国立高等専門学校機構「高専概要2025」・2026年9月20日確認)。
公立・私立の高専は、学校によって違います。たとえば、神山まるごと高専は全寮制ですが、東京都立産業技術高専には学生寮がありません(各校公式サイト・2026年9月25日確認)。
寮がある学校でも、入れる学年や、男子寮・女子寮があるかは学校ごとに違います。志望校の公式サイトや募集要項で確認してください。
通える範囲に高専がない場合、15歳で家を出るという選択が現実に出てきます。
高専を選ぶ前の留意点4つ
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学科を中学3年で決める
高専は1年生から専門が始まるので、入学した時点で学科が決まっています。
15歳の時点で「この分野をやってみたい」と思えるものがあるかどうかは、お子さんによって差があると思います。
一方で、早く決めたぶん、5年間をまるごとその分野に使えます。途中で大学受験のために手を止める必要もありません。ここは高専の大きな強みです。
進路変更に時間がかかることも
途中で「やっぱり違う分野がいい」となったとき、普通高校のように受験で進路を選び直す形にはなりません。
学科の変更ができるか、できるとしたらどんな条件かは、高専ごとに違います。志望校に確かめてください。
ただし、卒業後の進路は工学系だけに固定されるわけではありません。大学への編入学の受け入れ先も学科も学校ごとに違うので、気になる場合は早い段階で調べておくと安心です。
進級・卒業は高校と違う
高専は高等教育機関なので、進級や卒業の考え方も高校とは違います。基準は高専ごとに定められています。
卒業時の称号は「準学士」
先に書いたとおり、卒業したときの「準学士」は称号で、学位ではありません(学校教育法第121条)。
学位が必要な場面で不利になることがある、という点は文部科学省の検討会でも挙がっています。制度を変える検討は続いていますが、2026年9月の時点では決まっていません。
ここまでが留意点です。どれも「高専はやめたほうがいい」という話ではなく、知らずに入ってから気づくと困ることとして並べました。
体験談|僕が高専を知った日
中学2年の秋、友人との帰り道でした。
そこで初めて「高専」という言葉を聞きました。
「”こうせん”?何それ!?」
それが、僕の進路が変わった日でした。
学科を決めたのは、中学3年の夏のオープンキャンパスです。全学科の実習をひととおり体験して、電気工学科に決めました。
自宅から高専までは、公共交通で3時間ほどかかりました。母は寂しさと心配を抱えながら、受験を許してくれました。
入ってからも順調ではありません。最初の定期テストは40人中38位。赤点が4つ、生物学は36点でクラスの最低点でした。
でも、5年間通って卒業した今、あの帰り道がなかったらこの道はなかったと思っています。
※これは20年以上前、僕の学校での話です。学科の名前も入試の仕組みも、今は変わっているところがあります。それでも「実際に見てから決めた」という部分は、今も変わらず効くはずです。
まとめ|「合う人がいる」学校です
《この記事の要点》
- 高専は中学卒業後に5年間通う高等教育機関。全国に58校(国立51・公立3・私立4/令和7年度・文部科学省)
- 1年生から専門が始まり、学科は中学3年で選ぶ
- 卒業後は就職が58.2%、進学が38.7%(令和6年度・文部科学省)
- 入試・学費・寮は、設置者と学校によって違う。募集要項と公式サイトが基準
- 卒業時の「準学士」は称号であって、学位ではない(学校教育法第121条)
この記事の数字は、文部科学省と独立行政法人国立高等専門学校機構の公表資料をもとにした2026年9月20日時点のものです。公立・私立の高専については、各学校の公式サイトが基準になります。
高専が上で、ほかの学校が下、という話ではありません。合う人がいる学校です。
ここまで読んで、「うちの子はどうだろう」と思われたかもしれません。その答えは、この記事にはありません。
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